はじめに
メルマガの制作は、地味ですが手間のかかる仕事です。文面を考え、商品を選び、価格や画像を貼り込み、崩れないHTMLに仕上げる——これを配信のたびに繰り返します。特に「崩れないHTML」の部分が曲者で、Webページを作る感覚で書くと、Outlookで見たときにレイアウトがぐしゃぐしゃになったりします。
そこで私は、モーターサイクル用品を扱うECのメルマガ制作に、AIによるHTML自動生成を組み込みました。ポイントはAIがメールセーフなHTMLまで下ごしらえし、人はレビューして配信するだけにすること。
この記事では、その全体像と、なぜメルマガのためにわざわざAIを使うのかを解説します。
なぜメルマガ制作にAIを使うのか
メールHTMLはWebと別世界
まず前提として、メール用のHTMLはWebページのHTMLとはまるで別物です。外部CSSもJavaScriptも使えず、レイアウトは今どき珍しいtableタグの入れ子で組み、スタイルはすべて要素に直接書くinline CSSにする必要があります。理由はメールクライアントごとのレンダリング差で、これを無視すると環境によって表示が崩れます。
このルールを毎回手で守るのは、正直かなり疲れます。だからこそ、制約を機械に守らせる価値があるんです。詳しくはメールHTMLはなぜ特殊かで掘り下げています。
「調べて貼る」作業こそ自動化したい
メルマガ制作で時間を食うのは、文章そのものより「調べて貼る」作業です。この商品の今の価格はいくらか、画像のURLはどれか、商品ページのリンクは——。手作業だと商品ごとに管理画面を行き来することになり、しかもここでコピペミスが起きると、間違った価格を顧客に告知してしまいます。
AIに文面を書かせ、価格や画像はシステムが商品マスタから正確に差し込む。この分担で、退屈でミスの多い部分をまるごと減らせます。
人はレビューと配信に集中する
とはいえ、AIの生成物をそのまま配信するのは危険です。トーンがブランドに合っているか、訴求は適切か——ここは人が判断すべき領域です。
そこでこのシステムは、AIが下ごしらえしたHTMLを人がレビューし、修正指示を出してから配信する流れにしています。人は「ゼロから作る」のではなく「仕上げる」役割に回れるので、判断に集中できます。
文面もHTMLも手作り。商品価格や画像URLを管理画面から都度コピペし、コピペミスや表示崩れが起きやすい
メールセーフHTMLをAIが生成し、価格や画像はシステムが正確に差し込む。人はレビューと配信に集中できる
システムの全体像
生成から配信までの流れ
このシステムは、メルマガのテーマと載せたい商品を指定すると、AIがメールセーフなHTMLを生成し、それを人がレビューして配信する、という流れで動きます。生成されたHTMLは検証を通し、問題がなければMAツールに貼り付けて配信します。
メルマガの企画(テーマ・掲載商品)を入力する
商品マスタDBから価格・画像URL・商品リンクを正確に取得
AIが制約を守ったHTMLを生成し、ブランド別テンプレートを適用
生成結果を検証し、人が内容を確認・修正指示
HubSpotに貼り付けて配信。進捗はSlackに通知
AIには任せない部分をはっきり分ける
このシステムの肝は、「AIに任せる部分」と「システムが担保する部分」をきっぱり分けていることです。文章の生成やHTMLの組み立てはAIが得意ですが、価格やURLといった正確でなければならないデータをAIに書かせるのは危険です。LLMは平気で価格を「創作」します。
そこで価格・画像URL・商品リンクは、AIに触らせず、商品マスタDB(Neon Postgres)から取得した値をシステム側で差し込みます。AIは器を作り、事実はデータベースが埋める、という役割分担です。
ブランド別テンプレートの自動適用
このECは2つのブランドを扱っており、メルマガもブランドごとにヘッダーとフッターのデザインが異なります。毎回手で貼り替えるのは面倒なので、ブランドを指定すればテンプレートが自動で適用されるようにしています。AIが生成するのは本文部分だけで、ヘッダー・フッターは決まった型を差し込むイメージです。
役割分担の原則
AIは「文章と構造」を作り、システムは「正確なデータとブランドの型」を担保する。この線引きが、安心して使えるメルマガ自動化の土台になっています。
導入して見えたこと
制作時間とミスが同時に減る
もっとも分かりやすい効果は制作時間の短縮です。従来は1通のメルマガに何時間もかけていましたが、AIが下ごしらえした状態から始められるので、大幅に短くなりました。しかも価格や画像をシステムが差し込むため、コピペ由来のミスがほぼなくなりました。速くなって、かつ間違わなくなる——この二つが同時に得られたのが大きいです。
「壊れないHTML」をどう担保するか
一方で難しかったのは、AIに毎回メールセーフなHTMLを書かせることでした。少し油断するとdivレイアウトや外部CSSを使ってしまいます。これはプロンプトで制約を厳格に指示し、生成結果を検証してから使うことで対処しました。詳しくはAIに「壊れないメールHTML」を書かせる工夫で解説します。
レビューを前提にした割り切り
このシステムは全自動を目指していません。最後は必ず人がレビューして配信します。AIの生成物には、たまにトーンのズレや微妙な違和感が残るからです。全自動化を欲張らず「下ごしらえまで」と割り切ったことで、かえって安心して日常的に使える道具になりました。
まとめ
メルマガ制作へのAI活用は、「全部AIに書かせる」のではなく「AIが下ごしらえし、人がレビューして配信する」という設計にすることで、制作時間とミスを同時に減らせます。
- メールHTMLはWebと別世界。
tableレイアウトとinline CSSという制約を守る必要がある - 価格やURLなど正確さが命のデータはシステムが担保し、AIには創作させない
- ブランド別テンプレートの自動適用と、Slack通知を挟んだレビュー前提のフロー
それぞれの詳細は、以下のサブ記事で掘り下げています。