はじめに
在庫分析の指標といえば、金額と回転率が定番です。ではなぜ、私はそこにわざわざ体積という軸を加えたのでしょうか。
理由はシンプルで、倉庫では「場所を取ること」自体がコストだからです。金額や回転率は「価値」と「動き」を教えてくれますが、「どれだけ空間を食っているか」は語ってくれません。この記事では、体積データをどう集め、どう推定し、それが分かると分析がどう変わるのかを掘り下げます。
なぜ体積が必要なのか
金額の裏に隠れる「かさばり」
在庫金額だけを見ていると、単価の高い商品ばかりが注目されます。ところが倉庫の現場では、単価が安くても大きくてかさばる商品が、棚を何段も占領していることがよくあります。金額ベースの分析では「大した在庫じゃない」と判断される品番が、空間ベースでは深刻な圧迫要因になっている——このギャップを埋めるのが体積の役割です。
場所は有限で、回転しなければ塞がる
倉庫の空間は有限です。ある品番が空間を占有している間、その場所は他の商品に使えません。売れて出荷されれば空間はすぐに解放されますが、動かなければ延々と塞がったままです。つまり保管コストは「体積 × 滞留時間」で効いてきます。回転率という「動き」の指標と、体積という「空間」の指標を掛け合わせて初めて、本当の保管効率が見えてくるんです。
体積は「回転率の重み付け」でもある
同じ回転率でも、小さい商品と大きい商品では倉庫への負担がまったく違います。体積は、回転率という指標に「空間の重み」を与える役割を果たします。
寸法データをどう集めるか
カテゴリとEANを手がかりにする
体積を出すには、幅・奥行・高さの寸法データが要ります。しかし、全品番に寸法が整備されていることはまずありません。そこで頼りになるのが、商品カテゴリとEAN(バーコード)です。EANにひも付く商品情報や、カテゴリごとの標準的な寸法から、品番の寸法を引き当てていきます。既存のマスタに散らばった情報をかき集めるのが、最初の地道な作業になります。
欠損は推定で補う
それでも寸法が埋まらない品番は必ず残ります。ここで完璧を目指して立ち止まると、分析そのものが前に進みません。私は同一カテゴリの平均寸法や、近い商品からの類推で欠損を補い、まずは全品番に体積を割り当てることを優先しました。推定値には「推定である」というフラグを立て、後から精度を上げられるようにしておくのがコツです。
データ品質と割り切りのバランス
寸法データは、集めようとするといくらでも手間がかかります。梱包状態と単品状態で体積は変わりますし、不定形の商品もあります。ただ、分析の目的は「優等生と問題児をざっくり分離すること」であって、ミリ単位の正確さではありません。まずは推定込みで全体を回し、影響の大きい品番から実測で精度を上げる——この割り切りが、体積分析を実運用に乗せる鍵でした。
体積が分かると何が変わるか
保管効率という新しい物差し
体積が揃うと、需要(出荷実績)と掛け合わせた保管効率という指標が計算できます。よく出る商品が小さな体積で回っていれば効率は高く、動かない商品が大きな体積を占めていれば効率は低い。これにより、「金額は小さいが空間効率が最悪の在庫」といった、これまで見えなかった問題児をあぶり出せるようになります。
次のステップ: ランク分類へ
体積という軸が入ったことで、在庫を多角的に評価する土台ができました。ここから先は、回転率と保管コストを組み合わせて品番をA/B/C/Dのランクに分類していきます。体積は、そのランク分類を支える最も重要な入力データになります。
「なぜか倉庫が手狭」を感覚でしか語れない
どの品番が空間を圧迫しているかを数値で名指しできる
まとめ
体積を分析に加える理由は、倉庫では「場所を取ること」自体がコストだからです。寸法データの収集と推定には地道な作業と割り切りが必要ですが、いったん体積が揃えば、金額や回転率だけでは見えなかった空間の問題児が可視化できます。
体積という土台の上で、いよいよ在庫をランク分けしていきます。次は「回転率×保管コストのABCランク分類」で、その計算設計を見ていきましょう。全体像を振り返りたい場合は、ハブ記事「倉庫在庫の分析」もあわせてどうぞ。