複数データソースを横断する調査プロンプト設計

アクセス解析・検索データ・売上・CRMを1つの調査にまとめるプロンプトとデータ受け渡しの設計

GA4Search Consoleデータ分析横断調査プロンプト設計
読了時間: 8分

はじめに

AI調査エージェントの品質を決めるのは、実はコードよりもプロンプトです。「データを見ていい感じに提案して」とだけ頼むと、日によって着眼点がバラバラだったり、当たり前のことしか言わなかったりします。

この記事では、アクセス解析・検索データ・店舗売上・EC・CRMという性質の異なるデータを1つの調査にまとめるために、どうプロンプトを設計し、どうデータを受け渡しているかを解説します。

調査観点をプロンプトで固定する

なぜ観点を固定するのか

エージェントに毎日自由に調査させると、ある日は流入だけ、別の日は在庫だけ、と見る場所が揺れます。これでは「昨日と比べてどうか」という定点観測が成り立ちません。

そこで、見るべき観点をプロンプトにあらかじめ書き込みます。「各データソースについて、前週比・前月比の変化を確認する」「異常な増減があれば必ず数値の根拠とともに報告する」といった具合です。観点を固定することで、エージェントの出力が毎日同じ土俵に乗り、変化を比較できるようになるんです。

観点リストの具体例

実際には、データソースごとに「何を、どの粒度で見るか」を明文化しています。

この観点リストがあることで、エージェントは「今日は何を見ればいいか」に迷わず、毎回同じ深さで調査できます。

「気づき」の質を上げる指示

観点を固定するだけでなく、提案の質を上げる指示も欠かせません。

「確信が持てない場合は提案せず、質問として残す」という指示も入れています。無理に埋めさせないことが、提案全体の信頼性につながります。

データをエージェントに渡す設計

各データソースの取得方法

観点が決まっても、肝心のデータをエージェントの手元に届けなければ調査は始まりません。データソースごとに取得方法は異なります。

データ取得の流れ
APIで取得するもの

GA4・Search Console・Shopify・HubSpotは、それぞれのAPIから当日必要な範囲を取得

ファイルから読むもの

店舗売上CSVは、ローカルフォルダに置かれた最新ファイルを直接読み込み

前提コンテキストの付与

事業の背景や商品カテゴリの説明など、判断に必要な前提もプロンプトに含める

調査の実行

揃ったデータをもとにエージェントが横断分析

ローカルPCで動かしているからこそ、CSVのようなファイルもAPIデータも同じ土俵で扱えます。

トークンを浪費しない渡し方

すべての生データをそのままエージェントに流し込むと、あっという間に処理できる情報量の上限(トークン)を食い尽くします。

そこで、渡す前に要約・集計するひと工夫を入れています。たとえばGA4なら、全ページの明細ではなく上位ページと主要指標に絞る。CSVなら、行データそのものではなくカテゴリ別に集計した数字を渡す。エージェントに「生データを解釈させる」のではなく「集計済みの数字から示唆を出させる」ほうが、精度もコストも良くなるんです。

横断分析を促す文脈づくり

このエージェントの真価は、データソースをまたいだ推論にあります。それを引き出すには、各データを別々に渡すのではなく、関連づけて解釈するよう促す必要があります。

「検索流入・サイト内行動・受注・問い合わせを一連の顧客導線として捉え、どこにボトルネックがあるかを推論せよ」といった指示を添えると、エージェントは「流入は増えたのに受注は伸びていない、カート付近に課題がありそう」といった横断的な示唆を出してくれます。

提案を構造化して受け取る

出力スキーマの設計

エージェントの調査結果は、自由文ではなく決まったスキーマで受け取ります。形式が揃っていないと、業務ハブ側でうまく扱えないからです。

とくに evidence(根拠)を必須にしているのがポイントで、「なぜそう言えるのか」をデータで示せない提案は、そもそも出させません。

根拠データを必ず添えさせる

RAGの設計と同じで、ここでも大事なのは根拠を示せることです。

「タイトルを見直しましょう」だけの提案は、受け取った人が判断できません。「このクエリの掲載順位が3位から8位に下落し、クリック率も下がっている」という根拠がセットで初めて、承認するかどうかを人が判断できます。根拠の明示は、後段の承認フローを機能させるための前提条件なんです。

一貫した形式がもたらす運用の楽さ

出力形式を固定しておくと、業務ハブ側での扱いが劇的に楽になります。

提案を優先度で並べ替えたり、カテゴリで絞り込んだり、根拠データを折りたたんで表示したり——形式が揃っているからこそ、こうしたUIが素直に作れます。プロンプト側で構造を決めておく投資が、運用フェーズでずっと効いてくるわけです。

まとめ

複数データソースを横断する調査プロンプトの設計を解説しました。

  1. 調査観点の固定:定点観測を成立させ、当たり前の提案を封じる
  2. データの渡し方:要約・集計してトークンを節約し、横断分析を促す
  3. 出力の構造化:スキーマと根拠を必須にし、承認フローにつなげる

ここで作った提案を人がどうレビューし実行に移すかは「提案→承認→実行のヒューマンインザループ設計」で、そもそもエージェントをどう起動しているかは「AIエージェントを毎朝定時起動する仕組み」で解説しています。